刺繍作家 高嶺 尚子

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日記

2020.03.16

「手紙」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新作「手紙」が完成しました。額は太衣サイズ(509×394)です。夫とむすめと過ごす何でもない日々、だけど「彩る日々」をテーマに絵を描き続けています。「手紙」もそのテーマの中の1枚です。

 

手紙とは何かと問われたら、気持ちを伝えるもの、近況を報告するもの、重要なことを知らせるものだと答えます。むすめと過ごす日々の中で、その問いに対する答えがもう1つ増えました。手紙は相手にユーモアを届けるものです。

 

むすめが3年保育を終え、明日幼稚園を卒園します。むすめの幼稚園生活の中で、わたしはたくさんの手紙を貰い、またむすめが貰ってきたお手紙をたくさん見せてもらいました。

 

幼稚園でプラネタリウムに行き、たくさんの惑星が存在することを知ったむすめは、その中でも1番気に入った土星を絵に描き、「土星の中で1番ママがだいすきだよ!」という手紙をたくさん書いてくれました。むすめが、宇宙で1番好きな惑星である、土星の中での1番なので、最上級の熱烈さなのだと思います。

 

幼稚園の先生からも、たくさんお手紙をいただきました。夏休みにいただいた暑中見舞いのハガキに、「暑いので先生は毎日かき氷を作って食べています」と書いてあり、それをとても喜んだむすめと、先生は今日何味のかき氷を食べたのかな〜と、2学期が始まるまで毎日話しました。その先生を見かける度に、むすめとあれこれ話した色々な味のかき氷を思い出しました。

 

むすめは、お友だちとも毎日のようにお手紙の交換をしていました。折り紙の手裏剣を貰い、家で手裏剣を折ってお返事し、また手裏剣を貰って帰ってきたり、紙いっぱいにハートマークがぎっしり書かれたお手紙を貰ったり、ご飯屋さんに置いてあるハガキの、味の感想を書く欄にむすめへのメッセージを書いたものを貰ったり、愛とユーモアに溢れたお手紙でいっぱいでした。

 

相手を想いながら書く手紙は時として、伝えたい気持ちだけでなく、強烈なユーモアを伴って受け取る側の心に届くことがあることを知りました。手紙って面白い!

 

というところまでが、この絵のコンセプトで、ここで終わるはずでした。この「手紙」を作り始めた11月初旬には、このような状況で卒園式を迎えることになろうとは夢にも思いませんでした。卒園式で、むすめがお世話になった先生方に、感謝の気持ちを伝えたいと思っていましたが、それも叶いそうにありません。そこで、お話したかった先生方に手紙を書きました。今の想いを伝えることが出来る手紙という手段があってよかったなと、心から思います。今、このタイミングで「手紙」という絵を作り終えることが出来たのも、何か感慨深いものがあります。